1980年1月 開院
少名子しょうなご耳鼻咽喉科
院長:少名子正彬

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花粉症について

スギ花粉症

昨年の夏は猛暑でしたので、スギの花芽がたくさん成長して、スギの木には多くの花芽がついています。冬眠状態の花芽ですが、2月初め頃にひとたび春一番の南風が吹くと、花粉がいっせいに飛び始めることになります。
 また、今年の1月の気温が高いとなると、スギ花粉が冬眠から早く目覚めて飛び始める時季も早まります。このようなわけで、今年は10年ぶりに、たくさんのスギ花粉の飛散が予想されます。
こうして、スギ花粉症の症状が出始めると、水っぽい透明な鼻水がとめどなくあふれて、「くしゃん、くしゃん」とくしゃみが連続して出るようになり、やわらかい鼻の粘膜が浮腫を起こし鼻づまりもひどくなります。
 スギ花粉症を軽くすませるためには、鼻や目や口からスギ花粉が入ってこないように予防をして、少しでも症状が軽くなるように、生活環境を工夫することは勿論大切なことになります。

 しかしながら、花粉症を完全に防ぐことができないとなると、どのようにしたら良いのでしょうか。人間の血液には赤血球、白血球などのほかに、肥満細胞が存在します。
 この肥満細胞は細胞膜の中にアレルギ-反応を誘発するヒスタミンを蓄えています。
 この肥満細胞がスギ花粉に出会って、肥満細胞の被膜が破れると、肥満細胞の中に存在する多量のヒスタミンが放出されます。このヒスタミンが血中に増えると、自律神経などを刺激して花粉症が始まるのです。
 最近は、医学の進歩によって、肥満細胞の被膜が破れないように働く「ヒスタミン遊離予防薬」がたくさん発売されています。ところが、この薬は薬を飲み始めてから効果が出るまでに、2週間ほどかかりますから最初から花粉症をおさえるには、花粉の飛散が始まる半月ほど前からの早期の服用が必要となります。
 次のステップとして、「抗ヒスタミン薬」があります。この「抗ヒスタミン薬」には2種類あって、効果は早く出るが眠くなったりして日常生活に配慮を要するタイプのものと、比較的影響の少ない種類があります。2月になって、確実に症状がひどくなってきたときには、さらに薬の選択を工夫しなければなりません。スギ花粉症は2月から4月まで続き、ヒノキの花粉症の場合はさらに5月まで続いて苦しめられることになります。
 
 最近では、レ-ザ-治療も行われていますが、効果は1~2年のために、鼻粘膜の再生されてくると効果が薄れてまいります。したがいまして、花粉症の時季を乗り切る最も有効な最近の治療法としては、生活環境の注意点をアドバイスしながら、症状に応じてきめ細かく薬を処方して治療していきます。

 日本人の10人に一人がスギ花粉症ともいわれておりますが、人間の文明が発達すればするほど、好むと好まざるにかかわらず、アレルギ-の原因となる大気汚染、食生活、ストレスが排除できない要因として強くかかわってきます。
この現代病とも言われる花粉症との闘いは毎年春に繰り広げられる自然と人間との攻防として繰り返される医療のテ-マとして悩まされます。

 近年、スギ花粉は木が大きくなるまでに、大気汚染などの影響を受けて、木もストレスを受けて成長してきたために、アレルギ-を強める抗原の働きが強くなる現象が現れています。
更に、このスギ花粉を吸入する人間の側にも、さまざまなストレスが加わって、アレルギ-が誘発されやすくなる状態にあります。
 このように近年ますます、スギ花粉も人間もストレスを受けて、アレルギ-を起こしやすい体質になっています。
スギ花粉に反応する人の道順は、「スギ花粉が攻めてきちゃった」ということが、はっきりと分かるほど、感電したように次々に血液中の細胞に伝えられ、最後にアレルギ-反応を引き起こすヒスタミンを含んだ肥満細胞や好酸球に情報が伝えられます。大気汚染、洋風の食生活、ストレスなどのアレルギ-反応の要因が長い間加わっていると、スギ花粉が人間の身体にとってやっかいものとして認識するようになります。
 そして、最初のスギ花粉が肥満細胞の表面に抗体となり変わって待ち受け、再びスギ花粉がやってくると、このスギ花粉を排除しようとして戦いが始まります。それが抗原抗体反応としてのアレルギ-反応ということになります。 このアレルギ-反応がおこると、肥満細胞の膜が破れて、細胞の中にあるヒスタミンやロイコトルエンが流れ出してきます。このヒスタミンは鼻粘膜腺の表面にある三叉神経と呼ばれる知覚神経を刺激して毛細血管を広げて血管から水分をたくさん出します。ロイコトルエンは血液中の好酸球の活動が活発になると、鼻粘膜にむくみをおこして鼻づまりとなり、はげしい不快な症状を引き起こします。
 このようなわけで、花粉症の季節はヒスタミンとロイコトルエンの作用を如何に軽く抑えるかということに配慮しなければなりません。
 ですから、花粉症の人はまずは1月にはヒスタミン遊離抑制薬の服用を始めます。
 それでも症状が悪化する場合には、抗ヒスタミン薬、更にもう少し強い抗ヒスタミン薬、眠気が強ければ眠気の少ない抗ヒスタミン薬などを使って様子をみていきます。また、鼻づまりがひどい場合には、ロイコトルエンの作用を抑える薬が使われます。そして、花粉症がひどい時期には、免疫反応を抑えて肥満細胞を減らす働きがある薬に変え、症状が軽くなったら抗ヒスタミン薬で対応するようにします。



ワンポイント・アドバイス

 花粉を吸わないために、マスクに「当てガ-ゼ」をしましょう。
 「マスク」をつけるだけでも花粉の吸入を少なくする効果がありますが、特にマスクの内側全体よりも、鼻の穴を保護するように鼻の入り口に「当てガ-ゼ」を工夫してあててみた方が花粉の除去に一層の効果があります。
 ガーゼは通気性の良い状態でつけた方が、花粉がガ-ゼの隙間にくっつくことになるので、わざわざぬらしたりしない方が良いのです。
 「当てガ-ゼ」の取り替えは、あくまで外出前に家の中でつけ、はずす場合も家の中で行うようにしましょう。

 スギ花粉に敏感な人はスギ花粉の飛散開始日よりも早い時期から、スギ花粉が少しづつ飛んでいるので、早い時季から今年も「きたな」と感じる人が多いようです。
そして、例年のことながら、2月末までにははっきりとした花粉症の症状が出る人が急激に増え、3月の2週から3週にかけてが最も多くの人が病院を訪ねることになります。

スギ花粉の粒子は非常に小さいので風に乗って数十キロ離れた房総の台地のスギ林からさえもやってきます。特に、南風の強い日や晴天で乾燥した気温の高い日などは花粉症の人はもっとも悩まされる一日となります。
スギ花粉を包んでいる花粉の膜は薄くて水に溶けやすいので、鼻や眼はスギ花粉に触れて一番影響を受けます。一方、口やのどは唾液などでスギ花粉が洗い流されるので鼻や眼と違って症状が出にくいのです。

 スギ花粉のおこるメカニズムは血液中の肥満細胞にスギ花粉が外からやってきた侵入者としてとらえられて、この肥満細胞の表面にIgE抗体として蓄積されていきます。
 このIgE抗体がコップにいっぱいになるまでは、アレルギ-の症状が出ません。
 コップから溢れたときがくしゃみ、鼻水、鼻づまりが始まって確とした花粉症になります。
 このようにして、ひとたび花粉症にかかると、毎年春になると花粉症に悩まされ続けることになり自然治癒率は僅かに2%から5%の人しか望めないので、多くの花粉症患者にとって、毎年の春の憂鬱さは体験した人にしか分らない鬱陶しい季節となります。
 
花粉症がひどいときには、鼻がつまって夜も熟睡できなくなりますので、昼は言う迄も無く寝不足で集中力に欠けてぼんやりとすごして日常生活にも支障をきたしてしまいます。

 この花粉症を根本的に治療する方法として、花粉のエキスを少しづつ注射して2年かけて減感作する方法が唯一となります。それ以外に、対症療法としては内服、点鼻薬、点眼薬、手術療法などがあげられます。

 この花粉症を予防するには、花粉をできるだけ吸入しないように工夫して生活することが大切です。
外出から帰ってきたときには、家族みんなで協力しあって、洋服はすぐに着替えて家の中に花粉をもちこまないようにしましょう。
 毛織物の洋服などは花粉がつきやすいですね。帽子をかぶると、髪の毛に花粉がつきにくいですね。ゆっくりお風呂につかって体を休めることも自律神経のバランスを調節して、花粉症を軽くするのに役立ちます。
 お風呂は風呂の湯気を吸入することにもなり、鼻や眼の粘膜の乾燥をふせぐことで症状の軽減につながります。その他、42度に暖められた水蒸気を10分間吸入することも同じ効果が期待できます。
 ご家族で話し合ってください。まだまだ、工夫できることはたくさんあるはずです。



子どもの花粉症

今まで、花粉症は成人に多く、子どもに少ないといわれてきました。
花粉にさらされる時間が長ければ、その間身体に抗体の数が増えて、例えば、コップいっぱいになるまでは症状が出ないのですが、この抗体の量が一定量以上に蓄積されるとコップの水があふれる状況になり、くしゃみ、鼻水、鼻閉などのアレルギ-の症状が出てくると考えられてきました。

 子どもはまだ症状が出るほど花粉にさらされていないはずですが、最近、子どもの花粉症が増えてきています。以前に比べて近年は特に昨年など、たくさんの花粉が飛びましたから、花粉の量が増えて、身体に蓄積される抗体の数が急速に増えたためでしょう。

小児では特に予防や治療の面で、抗原や細菌感染にさらされる機会の多い鼻粘膜の過敏性はどうかや扁桃腺の働きがアレルギ-をくい止める働きをしないで、かえってアレルギ-を起こすことになっていないかなどの相互作用も考慮しておかねばなりません。

アレルギ-性鼻炎は小児期に発症して、長い間アレルギ-症状に悩まされ続けて、成人になるまで持ち越してしまうことがあります。

 また、アレルギ-性鼻炎はひどくなると、喘息が悪化したり、喘息が軽くなったら、今度はアレルギ-性鼻炎になって喘息がおさまる例もみられます。

 小児のアレルギ-性鼻炎は「アレルギ-・マ-チ」という表現になって知られていて、喘息、食物アレルギ-、アトピ-性皮膚炎とお互いに切っても切れない関係と言えます。

 まだ、よく意思の伝達ができない4歳以下の小児では、手で鼻をこする、鼻をよくかく、目の下のくま、睡眠不足で落ち着かないなどのしぐさが目立つようなときには、アレルギ-も念頭においてみなければなりません。

 大人が気をつける一番大切な予防法は子どもが花粉にさらされる機会をできるだけ減らしてあげる工夫と努力が大切です。
しかしながら、子ども自身が花粉に過敏になって神経質になることは避けたいものです。





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